僕が担当させていただいた3回連続講座のNPOアカデミー、最終回となる第3回目の講座が先日開催されました。
第1回目、第2回目に引き続き、今回もNPO法人 e-Educationインターン生の越村麻里さんが参加し、イベントレポートを書いてくれたので、寄稿記事としてアップします。前回以上の超大作記事です!
フローレンスとe-Education、Webマーケティング先進NPO2団体の事例にご興味をお持ちの方はぜひ。(加藤 たけし)
【イベント概要】
NPOアカデミーに登壇します!
フローレンス、かものはし、e-Education、PLASのWebマーケティング事例をご紹介
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ソーシャルメディア活用、Webマーケティング戦略入門
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かものはしプロジェクト&PLASのWebマーケティング戦略ケーススタディ 〜行動喚起・クチコミ促進〜
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WEB・ソーシャルメディアのマーケティング戦略の作り方
先日、NPOサポートセンター主催「NPOアカデミー 〜プロフェッショナル・スタッフのためのSummerセミナー〜」が提供する講座の1つ、「WEB・ソーシャルメディアのマーケティング戦略の作り方」という全3講座の3回目、最終回が開催されました。
第1回目の「ソーシャルメディア活用、WEBマーケティング戦略入門」、第2回目の「Webマーケティング戦略ケーススタディ Part1 〜行動喚起・クチコミ促進編〜」に続く第3回目のテーマは「Webマーケティング戦略ケーススタディ Part2 〜認知獲得・活動理解編〜」。
1. マーケティング戦略策定フレームワークについて(加藤たけしさん)
2. メディアを立ち上げて良かった3つのこと(e-Education 三輪さん)
3. マンスリーサポーターを増やすためにこの1年間注力してきたこと(フローレンス 藤田さん・請関さん)
4. トークセッションとまとめ、質疑応答
ということで、今回はゲストにNPO法人e-Education代表理事・三輪 開人さん、そして認定NPO法人フローレンスからは経営企画室マネージャー 藤田 順子さんとファンドレイジング担当の請関 大輔さんをお迎えし、実際に取り組んでいらっしゃるマーケティング事例について具体的に講義していただきました。
今回もわたくし越村麻里が参加させていただきました(3回連続!)ので、その様子を詳しくご紹介します!
もくじ
マーケティング戦略策定フレームワークについて
まず、加藤さんによる過去2回の講座のおさらいから始まりました。詳しくは 第1回「ソーシャルメディア活用、WEBマーケティング戦略入門」、第2回「Webマーケティング戦略ケーススタディ Part1 〜行動喚起・クチコミ促進編〜」 といった2つのレポート記事をご覧ください。
そして今回も、上記記事で紹介した「マーケティング戦略策定のフレームワーク」をもとに、「認知獲得」と「活動理解」をメインに、フローレンスとe-Educationの実例を2人のゲストがお話ししてくださいました。
メディアを立ち上げて良かった3つのこと(e-Education 三輪さん)
NPO法人e-Education代表理事・三輪 開人さんからは、メディア運営を通しての認知獲得・活動理解についてお話ししていただきました。
まずは、三輪さんのプロフィールをご紹介。
e-Educationが抱えていたのは、どの団体にもあるであろう問題です。それは「私たちの活動を、もっと多くの方々に知ってもらいたい。興味を持ってもらいたい。」ということ。
そこでe-Educationが行ったのは、「WEBメディアを0から作る」という取り組みでした。
e-Educationは現在、トジョウエンジン( http://eedu.jp/blog/ )という「途上国のイメージをもっと豊かにするウェブマガジン」を運営しています。
トジョウエンジンは、「途上国に触れる機会がある時に、e-Educationの活動を知ってほしい。」「途上国に実際に行ってみてほしい」という想いのもとに作られました。
以下の4種類のコンテンツを軸に情報発信しているメディアです。
「ワンダーライフ」「グッドアイデア」「ビジネスウェーブ」では、途上国ならではのワクワクするアイディアを紹介。また「ドラゴン桜」では、e-Educationの実際の活動として、途上国の田舎の貧しい子どもたちが難関大学の合格を目指すストーリーを紹介しています。
一見、最初の3つはe-Educationの活動には直接関係ないように思われますが、途上国に関する記事に興味を持ってもらい、そして付随的にe-Educationの活動を知ってもらい、ファンになっていただく…そんなきっかけづくりのための記事となっています。
また「ドラゴン桜」では、e-Educationの現地での活動を追体験していただくことにより、e-Educationを応援してくれるファンの獲得も狙っているとのこと。
たとえばトジョウエンジンでは各カテゴリにおいて、以下の記事がよく読まれています。ご興味をお持ちの方はぜひチェックしてみてくださいね。
2013年1月に開設したトジョウエンジンは、12月末には30人のライター、そして年間1,200記事、月間11万アクセスを達成! トジョウエンジンを立ち上げて良かった3つのことを、三輪さんは次のようにおっしゃっていました。
1. 新しいファンがファン
2. 新しいメンバーの採用に成功
3. 新しい寄付(協力)が可能に
トジョウエンジンというメディアをきっかけに、e-Educationの活動について知り興味を持ってもらったり、新しいメンバーが集まったり、時間も場所も関係のないWebメディアで様々なことが可能になったそうです。
しかし実際、自団体のWebメディアを運営するのは、どのようにすればよいのでしょうか。三輪さんは次のようにおっしゃっていました。
まずは団体としてではなく、個人としてご自身で始めてみてください。
事実、三輪さん自身も個人ブログ「みんなの扉を開く鍵( http://edu-dev.net/ )」から始めていました。
まずは個人ブログから始めて、3カ月毎日書く。手当たり次第即座に始めるというより、自分に「書く」ということのイメージを落とし込んでから始めるということが大切なのです。
次に、現在の課題と今後の展望についてお話しいただきました。
課題1:記事数/アクセス数の減少
開設から3年目となったトジョウエンジンでは現在、記事数とアクセス数が減少しています。しかし三輪さんいわく、これは全く問題ないとのこと。
本当に大切なことは、記事数とアクセス数ではなく、”続ける”ということ。このWebメディアの戦いはまだまだ始まったばかりなのです!
三輪さんはこのように力強く語ってくれました。
課題2:プル型メディアの限界
「プル型」をご存知ですか?
「プル型」というのは、ユーザーの能動的なアクションにより、情報提供やプロモーションを行うこと。つまり、インターネットの検索行為などです。
しかし、プル型ばかり期待していては限界がありますし、「プッシュ型」も大切になってきます。ここで言う「プッシュ型」というのは、ユーザーの能動的なアクションに関わらず、情報提供やプロモーションを行うこと。
そこでe-Educationでは、「プル型」と「プッシュ型」の間を狙おうと活動しています。

トジョウエンジンのWebコンテンツを充実させ、さらにそれをSNSなどを活用してしっかりと情報発信を行って、e-EducationならではのWebマーケティングを行っています。
そして2014年12月、「顔の見えるメディアづくり」へ挑戦も開始しました。「みんなの声( http://eedu.jp/voice/ )というメディアです。
e-Educationは設立当初から、以下2つのことを問題視していました。
1つ目は「支援の透明性」。寄付者の方が、自分の出したお金がどのように使われ、どんな成果が出たのか、ということを知りたいと感じるのは当たり前のことです。
数字だけではなく、本当に受益者が幸せになったかどうか、リアルな「声」を支援者の方たちに届けるのがNPOの仕事であり、非常に難しい問題でした。
また2つ目は「支援者の貢献度」と「世間からの評価」のギャップです。
NPOやNGOは寄付で成り立っている団体です。しかし、その寄付者がどのような人たちなのかというのはあまり知られていません。
仕事が忙しくて時間がない中、それでも社会を変えようとお金を託してくれる人たちの挑戦が語られることは少なく、支援者に対する世間からの評価や関心の無さをずっと疑問視してきました。
そこでe-Educatinでは、次の3つのことを果たすために、「みんなの声」という新たなメディアを立ち上げました。
1. 受益者である途上国の子どもたちのリアルな「声」を支援者の方々に届けること
2. 応援してくれる人たちのエピソードをメンバー全員が把握し、それを海外で頑張る人たちに届けること
3. 頑張る人や応援する人の声によって、新しいムーブメントを作ること
デザインにも凝り、支援者と受益者が対話しているようなデザインにしています。
課題3:資金獲得への挑戦
e-Educationでは「社会貢献型広告」にチャレンジしています。「社会貢献型広告」とは、途上国に関心のある人へのピンポイントな情報発信(広告)+途上国の子どもたちへの教育事業の支援(CSR)のことです。

現在では、「Dialog+(ダイアログプラス)」とe-Educationで「フィリピン就業支援プロジェクト」という新しいカタチの企業連携を行っています。詳しくはコチラをご覧になってください。
<参考URL>
Dialog+ x e-Education フィリピン就業支援プロジェクト
https://www.english-dialogclub.com/wte/eedu/
講演の最後に、三輪さんは次のようにまとめていました。
NPOの得意分野は泥臭いことをやること。
e-Education、トジョウエンジン共々、まだまだ泥臭く活動していきます!
5年目を迎えたe-Education。これから先のマーケティング戦略も楽しみです。
マンスリーサポーターを増やすためにこの1年間注力してきたこと(フローレンス 藤田さん・請関さん)
e-Education代表の三輪さんに続いて、フローレンスからは経営企画室マネージャーの藤田 順子さんとともに、ファンドレイジング担当の請関 大輔さんも登壇。成長を続けるフローレンスがこの1年間で注力してきたことは、大きく次の2つでした。
1. 時事トピックスに関するタイムリーな発信
2. 興味を持ってくれた人に、いかにスムーズに行動を起こしてもらえるか
この2点を中心にフローレンスの戦略的広報活動について、藤田さん&請関さんにお話ししていただきました。
最初に藤田さんから「認知獲得編」として、時事トピックスなどを通していかに認知度獲得を目指してきたか、具体的な事例を踏まえてお話しいただきました。
時事トピックスに関するタイムリーな発信
フローレンスでは寄付の割合が増えており、特に2014年度は前年比142%の会員増と、近年の成長率と比較しても大幅な成長を達成しています。
そんなフローレンスでは、「子育て」に関する時事トピックスについて、タイムリーに発信するように心がけているそう。その発信する意義を次のようにおっしゃっていました。
そのような活動をしている中で、ぶつかった課題は「スピード感」でした。
タイムリーな発信のためには何よりもスピードが大切で、これは「チームでやればやるほど効果的」だということが分かったそうです。
この課題を解決するため、フローレンスでは以下の4つを意識しているとのこと。
1. ニュースを掴む力(つかんで、入り口と出口を考える力)
2. 決定フローの仕組化・整理
3. 書く力
そして、これらをいかに「4. 仕組み化」するか
ニュースをいかに早くキャッチするか、そしてそこから整理し、言語化していく…一見簡単なようで、実際やるとなったらとても大変なことです。
フローレンスでは、Googleアラートをチームで共有したりしながら情報をキャッチしているそう。
また3〜4の「書く力」「仕組化」については、日頃の発信業務の中で、書くトレーニングを行っているとのこと。
時事にまつわるカウンターメッセージでは、社会的に関心を集めているトピックスであればあるほど、丁寧に扱わねばなりません。また、団体としての解釈・立ち位置を表明することでもあるので、微妙なニュアンスのことを表現できる文章スキル、フローレンスの発信として落としどころに向けた起承転結を構成するスキルが必要です。
こういった書くスキルを上げていくために、複数のメンバーで持ち回りで原稿を起こすようにしています。具体的には0→1の部分を担う人、文章を最終化する人の2名以上が関わり、記事の質を担保しながら、大事なポイントを擦り合わせていくトレーニングを行っています。
興味を持ってくれた人に、いかにスムーズに行動を起こしてもらえるか
また後半の「ファンドレイジング編」では、フローレンスでファンドレイジングに取り組む請関 大輔さんに、興味を持ってWebサイトに来てくれた人がストレスなく情報閲覧でき、スムーズに寄付にたどり着けるためのWebサイトづくりについてお話をしていただきました。
フローレンスは昨年11月、寄付サイトを大幅リニューアル! サイトを改善したことで、課題の1つ目であったモバイルアクセスが増加。以前は寄付サイト訪問者の32%でしたが、リニューアル後には60%にまで増やすことができました。

さらに、寄付の方法の選択肢を増やした(都度の寄付にクレジットカードを利用可能にした)ところ、単発寄付件数が増えたそうです。
他にも、ランディングページを最適化することによって、わかりやすく見やすいサイトへとリニューアルすることができました。
やはりここでも、PDCAサイクルがグルグルと回されていました。課題意識を持って行動し、そこから分析してまた行動するという行為がいかに大切かということを改めて感じました。
フローレンスが考える今後のアクション
最後に、フローレンスが今後予定しているアクションについてもお話ししていただきました。
1. Webの新規訪問者をリピート訪問者へ
寄付サイトをリニューアル後、日々の分析を行う中で、新規訪問者とリピート訪問者に傾向があることが判明しました。そこで、一度サイトを訪れた際にMN登録などをしてもらい、複数訪問のきっかけにすることを強化していきたいとのことでした。
2. メルマガの改善
メールマガジン配信サービスのメール解析機能を活用し、URLリンクのクリック率などを解析。PDCAを細かく回すことでさらなるコンバージョンにつなげていきたいとおっしゃっていました。
急成長を続けるフローレンスのマーケティング戦略、今後も楽しみですね!
戦略を立て、取捨選択をしながらPDCAサイクルを回すこと
また終盤には加藤さんがモデレーターとなり、フローレンス藤田さん&請関さん、e-Education三輪さんに質問を投げかけるトークセッションや質疑応答も。
今回の講座を受けて、(毎回同じようなことを言うのですが…笑)大切なことはやっぱり次の3つでした。
しっかりと目的を定めること。その目的のためには何が必要で、何をすべきかをはっきりさせること。そして、PDCAサイクルを回し続けて、結果を得るまで努力していること。
これは講座の第1回目から加藤さんが繰り返しおっしゃっていることですが、フローレンスとe-Educationにも共通していたポイントです。両団体とも戦略を立てて、取捨選択をしながら、PDCAサイクルを回しつつより良いものを提供していこうと奮闘していました。
振り返ってみると、3回の講義があっという間でしたが、本当にためになるお話ばかりでした。他団体の事例を学びながら、自分たちの団体にいかに活用していけるかが今後の課題ですね。
改めて、登壇されたフローレンス藤田さん&請関さん、e-Education三輪さん、そして加藤たけしさん。貴重はお話をありがとうございました!
ということで3回連続講座の最終回、Webマーケティング戦略ケーススタディPart2 〜「認知獲得」「活動理解」編〜 のレポートをお届けしましたが、いかがでしたでしょうか。
過去2回分のレポート記事もまだお読みになっていない方はぜひ。
【イベント概要】
NPOアカデミーに登壇します!
フローレンス、かものはし、e-Education、PLASのWebマーケティング事例をご紹介
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ライター:越村 麻里(NPO法人e-Education インターン)
慶應義塾大学文学部図書館情報専攻3年。ソーシャルデザインやフェアトレードなどに関心がある。
「Huglobe!(はぐろぶ)」 でのインターンを経て、トジョウエンジン編集インターンに。e-EducationのSNS運用も担当している。
Facebookアカウント:https://www.facebook.com/mari.koshimura.75
<NPOのWebマーケティングに関して>
以下はNPOサマースクールの講演スライドです。微力ではありますが、できる範囲でNPOの方々のお力になれればと思っていますので、何かあればいつでもお声がけください。
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加藤たけし&佐藤茜(@AkaneSato)夫婦2人の情報発信
インターネット、マーケティング、テクノロジー、コミュニティデザイン、NPO、地域活性、海外、新しい働き方などのテーマにおいて、加藤たけし&佐藤茜( @AkaneSato )の夫婦2人で情報発信しています。
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