もくじ
パーソナル・デモクラシー・フォーラム(Personal Democracy Forum)に世界の最新事例が結集!
ニューヨークで毎年開催されている政治・行政・市民参画とテクノロジーに関する国際会議「パーソナル・デモクラシー・フォーラム(Personal Democracy Forum)」。今年のテーマは「シビックテック」でした。
僕自身も今年3月に開催されたシビックテックフォーラムに参加し、以下のイベントレポートを書いたように、非常に注目しているテーマです。
<シビックテックに関するイベントレポート>
■ シビックテックフォーラムで語られたスタートアップの育成環境、シビックテック大国のエコシステムづくり
■ 社会的インパクト投資、シェアリングエコノミー、代表制民主主義…世界の事例に学ぶシビックテック最前線【イベントレポート】
僕たち夫婦がニューヨークに行ったのは7月に入ってからなので、残念ながら現地参加はかなわなかったのですが、シビックテック界の著名人がニューヨークに集結した「パーソナル・デモクラシー・フォーラム 2015」に日本から参加したお三方が帰国報告会を開催してくださったので、その内容をダイジェストでご紹介します。

■スピーカー
市川 裕康 氏(ソーシャルカンパニー 代表取締役) @SocialCompany
藤井 宏一郎 氏(公共戦略コミュニケーション「マカイラ」代表) @kofujii
古田 大輔 氏(朝日新聞デジタル編集部記者/編集者) @masurakusuo
パーソナル・デモクラシー・フォーラムに3年連続参加して感じる潮流
今年で3年連続3回目のパーソナル・デモクラシー・フォーラムへの参加となる市川さん @SocialCompany は「Personal Democracy Forumに3年連続参加して感じる潮流」というタイトルのもと、注目セッションやトピックを簡単に紹介してくれました。

テキストとビッグデータで緊急時のホットライン「CrisisTextLine(クライシス・テキスト・ライン)」
テキストとビッグデータを活用することでインパクトを与える「CrisisTextLine(クライシス・テキスト・ライン)」は約2年前に開始したサービスです。若者が抱える鬱、自殺未遂、過食症、いじめなどの悩み相談をテキストで受け付け、それに対して専門のカウンセラーが対応しています。
現在では1日あたり平均2万件ものテキストメッセージが寄せられており、これまでで延べ670万件もの問い合わせが蓄積されているとのことですが、この膨大なデータがビッグデータとして蓄積されています。
自然言語処理によって分析し、その解析データを実際の支援に活用できるようになっているとのこと!
■CrisisTextLineを始めたNancy Lublin氏の登壇の様子
具体的には、寄せられるメッセージの内容から相談内容を自動的に予測し、準備した対応メッセージや蓄積された対応措置を迅速に届けることができているようです。
今までにない領域でイノベーションが起きていることを実感しますし、まさにシビックテックを象徴するような事例ですね。
オバマ政権が推進する「The US Government Digital Service (米国政府デジタル・サービス)」
アメリカ政府で進んでいるデジタル・イノベーションの様子として紹介された「The US Government Digital Service (米国政府デジタル・サービス)」についても、非常に興味深い内容でした。
米国政府デジタル・サービスが設立されたのは2014年8月なので、まだ1年経っていません。昨年のパーソナル・デモクラシー・フォーラムでは英国政府デジタル・サービスのエグゼクティブ・ディレクターが登壇し、デジタルテクノロジーを活用することで行政サービスを改善することの重要性やインパクトを語っていたようですが…
それからわずか1年後の今年のパーソナル・デモクラシー・フォーラムにおいて、1年前はまだ存在していなかった米国政府デジタル・サービスが数多くの実績と目に見えるインパクトを語っているこのスピード感を、市川さんは「”未来を見てしまった”ような錯覚と刺激を感じた」とおっしゃっていました。
ホワイトハウスに優秀な技術者が集結している様子を描いた6分動画 #pdfjp – Megan Smith: From Google to the White House http://t.co/pssiVh5HHD
— Hiroyasu Ichikawa (@SocialCompany) 2015, 7月 10
行政サービスを革新する「オバマ政権の密かなスタートアップ」、引き続き注目したいと思います。
なお、市川さんは講談社の現代ビジネスで4記事にわたり、パーソナル・デモクラシー・フォーラムの参加レポートを詳細にまとめてくださっています。ご興味をお持ちの方はぜひじっくりお読みください。
<参考記事>
■ 「シビックテックとは、少数ではなく多くの人々の生活を改善するテクノロジー」 パーソナル・デモクラシー・フォーラム参加レポート
■ この1年半でシリコンバレーのトップ技術者500人を招聘? オバマ政権が推進する「米国政府デジタル・サービス」の現状
■ グーグルの調査で明らかになった「興味ある傍観者」の存在—政治・市民活動を「自分ごと」として理解してもらうためには
■ ニューヨークにできた“シビックテック”ムーブメントの一大拠点! グーグル、マイクロソフトも支援する「シビックホール」の大きな意義
日米の社会的・歴史的文脈の中でシビック・テックを位置付ける
元Google Japanの執行役員 兼 公共政策部長であり、現在はマカイラ株式会社を立ち上げて公共戦略コミュニケーションのコンサルティングに取り組んでいる藤井さん @kofujii の講演タイトルは「日米の社会的・歴史的文脈の中でシビック・テックを位置付ける」でした。
なんと! 今回の報告会にあたって、今年のパーソナル・デモクラシー・フォーラムの全セッションの動画を全て見返してスライドにまとめてくれたとのこと!
2日間にわたって開催された今年のパーソナル・デモクラシー・フォーラムのエッセンスがわかりやすくまとめられたスライドはこちらです。
・民主主義は壊れている
・資本主義も壊れいてる
・この社会は分断されている
・シビックテックが得意な分野
・シビックテックが苦手な分野
・新しい技術の活用
・テクノロジーの負の側面への対応
・シビックテックを支える法制度的な基盤
このように、テーマ別に見ても非常に多くのセッションが紹介されており、全てを見るのは本当に大変だったかと思います。
でも、以下のように非常に整理されたスライドもありました(上記スライドの11ページ目です)し、理解がすごく進みました。
シビックテックとパーソナル・デモクラシー・フォーラム:ネットワーク化されたパブリックな空間
また、司会進行を務めてくださった朝日新聞デジタル編集部の古田さん @masurakusuo はオープニングで「シビックテックとパーソナル・デモクラシー・フォーラム」というタイトルでお話ししてくださいました。
シビックテックという言葉の意味、これまでの歴史、そして今回のパーソナル・デモクラシー・フォーラムで語られたテーマが「低い投票率」「黒人の問題」「密猟者が多いこと」など、本当に多岐にわたっていたことが紹介されました。
テーマは一見バラバラですが、「Networked Public Sphereの拡大によってあらゆるテーマが語られるようになった」というのはすごく納得できる話でした。
Built with, Not for(誰かのためにではなく、共に)
そして、パネルディスカッションも含め、キーワードとして何度も出てきたのが「Interested Bystanders(興味は持っている傍観者)」についてです。
これも前述の市川さんの「グーグルの調査で明らかになった「興味ある傍観者」の存在—政治・市民活動を「自分ごと」として理解してもらうためには」という記事で詳しく紹介されていますのでここでは割愛しますが、市民一人ひとりの政治・市民活動への参画に関する現状と課題については、さらに議論を深める必要がありそうです。
正直、自分自身もこのInterested Bystanders(興味は持っている傍観者)であるような気もしてしまいますが…その状況も含めて、「どうしたら多くの人々に参加してもらえるようになるか」というのは今後の大きな課題ですね。
パーソナル・デモクラシー・フォーラムの中で何度も登場した言葉として市川さんが紹介してくださった「Built with, Not for(誰かのためにではなく、共に)」に込められているように、仲間と共に、より良い世の中を創り上げていくような考え方、生き方が求められているはずですよね。
また、その延長線上にある話ですが、政府と民間を行き来するリボルビングドアについての議論も活発に行われました。リボルビングドアがないという話は僕自身も全く同感で、政府と民間に限らず、セクターを超えて活躍している人がまだまだ少ないなぁと常日頃から思っています。
政府にしか解決できない課題は年々減っており、民間や個人が関わり、解決する課題が増えてきていると感じます。また、グローバル化等でビジネスが複雑化し、企業間の競争も激化しているために、必要とされる人材の幅も広がっています。
企業、政府、非営利組織の境界は年々曖昧になってきており、持続的な発展のためには全てのセクターでの知見を集結させることが必要になってきているのだと思います。
※ 企業、政府、非営利組織の垣根を超えて活躍するトライセクター・リーダー(Tri-sector Leader)とは? より
妻の茜(@AkaneSato)もこう書いてますし、僕たち夫婦は2人でトライセクターでより活躍できるよう、日々頑張っているつもりです。
僕自身もビジネスとしては引き続きループスで、NPOとしてはソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)やe-Educationで。また個人としても、妻の茜の専門分野とも関わりを持ちつつ、セクターを超えて価値を出せるような活動を加速していきたいと思います。
ちなみに今回のパーソナル・デモクラシー・フォーラム帰国報告会、告知当初は朝日新聞メディアラボ渋谷分室で40人規模で開催される予定だったのですが、あっという間にキャパシティを超え、最終的には早稲田大学の教室に変更となり、参加者も約100名とのことでした。
改めて、この分野への注目度が高まりつつあることを実感します。
最後になりますが、念のため繰り返し。
パーソナル・デモクラシー・フォーラム 2015のセッション動画は全て公式サイトにアーカイブされています。僕もほとんどキャッチアップできていませんが、これらのセッション内容をもとにディスカッションをするような場も継続的に設けられるといいですね。
「シビックテック研究会」というFacebookグループも立ち上がったようですし、ご興味をお持ちいただける方はぜひ!
ちなみにこの記事ですが、半分は妻の茜( @AkaneSato )に向けて書いたつもりです(笑)僕はもちろん、特に妻が強い興味を持っていた内容だったのですが、残念ながら出張で参加できなかったので…代打出席したつもりで書きました(^^;)
改めて、素晴らしい帰国報告会を開催してくださった市川さん、藤井さん、古田さん、本当にありがとうございました! 来年はみんなでニューヨーク行きましょう!!
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加藤たけし&佐藤茜(@AkaneSato)夫婦2人の情報発信
インターネット、マーケティング、テクノロジー、コミュニティデザイン、NPO、地域活性、海外、新しい働き方などのテーマにおいて、加藤たけし&佐藤茜( @AkaneSato )の夫婦2人で情報発信しています。
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