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シビックテックフォーラムで語られたスタートアップの育成環境、シビックテック大国のエコシステムづくり【イベントレポート】

CIVIC TECH FORUM(シビックテックフォーラム) には日本中から350人が集結 

「シビックテックフォーラム(CIVIC TECH FORUM) 」に日本中から350人が集結

 
テクノロジーを活用した市民の手による地域課題の解決、行政・政治・市民参画、そして公共とITの新しい関係などを表すキーワードとして注目されているシビックテック

聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、アメリカでは1年半ほど前にこのようなスライドが公開されているなど、シビックテックの新しいエコシステムが隆盛してきています。

<参考記事>
Civic tech in 2015: $6.4 billion to connect citizens to services, and to one another
http://www.techrepublic.com/article/civic-tech-in-2015-6-9-billion-to-connect-citizens-to-services-and-to-one-another/

 
そんなシビックテックの課題と可能性をテーマにしたイベント CIVIC TECH FORUM(シビックテックフォーラム) が東京で開催され、僕も妻の茜( @AkaneSato )と夫婦2人で参加してきました。

シビックテックの課題と可能性をテーマにした「CIVIC TECH FORUM(シビックテックフォーラム)」
 
今回のシビックテックフォーラムに日本中から350人が東京科学技術館に集結したというのは、このテーマに対する国内の注目度も一気に高まってきていることを象徴していると言えるのではないでしょうか。

ということで、シビックテックフォーラムで語られた内容は動画アーカイブや講演スライドが公開されてますし、ぜひ多くの方に関心をお持ちいただきたいと思い、ダイジェストでその内容を紹介します。
 
 

Google公共政策部やETIC.が登壇した「シビックテックスタートアップの育成環境」セッション

 
シビックテックスタートアップの育成環境をテーマにしたパネルディスカッション

世界的にもシビックテックの分野をリードしているGoogleは2014年、NPO向けの新サービス「Google for Nonprofits」の日本版をローンチ。さらに「Googleインパクトチャレンジ」として、最大5,000万円の助成金をNPOに支援するプログラムをスタートしています。

そんなGoogleからは公共政策部の恩賀氏が登壇したこのセッション。Googleインパクトチャレンジのプログラム紹介とともに、背景にある想いを語ってくれました。

Googleインパクトチャレンジについて語るGoogle公共政策部 恩賀氏

印象に残ったのは、「もし資金というボトルネックが消えたら、今立ち向かっている社会課題をどう解決するか」という「発想の拡張」の話。そのきっかけとなること自体にGoogleインパクトチャレンジの価値があるというのは、本当にその通りだと思います。

もちろん、総額3億5,000万円にのぼる助成金の額にも文字通りインパクトがありますが(笑)
 
20年以上の取り組みについて語るNPO法人ETIC.インキュベーション事業部マネジャー 佐々木氏

また、起業家型リーダーの輩出を通じて社会のイノベーションに貢献するための取り組みを20年以上も続けているNPO法人ETIC.からはインキュベーション事業部マネジャーの佐々木氏が登壇。

既に社会課題の解決に取り組んでいるNPOや起業家がテクノロジー活用の視点を持つことの重要性、そしてそれを支援する仕組みづくりなど、非常に興味深い話を聞くことができました。

起業家型リーダーの輩出を通じて社会のイノベーションに貢献するNPO法人ETIC
 
富士通のあしたのコミュニティーラボ、そしてリクルートのTech Lab Paakの話も含めて、ご興味をお持ちの方は以下動画アーカイブをぜひ。


 
 

「シビックテックのための新しいエコシステムづくり」をテーマにシビックテック大国から来日講演

 
シビックテックのための新しいエコシステムづくりについて語られた来日講演

今回のシビックテックフォーラムの中で最も注目していたのは、Code for Americaの米中西部地域コーディネーターを務めるクリストファー・ウィテカー氏の基調講演です。

Code for Americaをはじめクリストファー・ウィテカー氏が手がけている仕事

イリノイ州政府機関勤務を経て、シビックテックに特化したコンサルティング会社を創業したクリストファー・ウィテカー氏は、シカゴのシビックテック第一人者。ホワイトハウスからの表彰実績もあり、若くして活躍していらっしゃる方です。

シカゴにおけるシビックテックのためのエコシステム
 
実は前日にも以下写真のようにプレミートアップが開催され、その場でも少し話は聞いていたのですが、その場では質疑応答が中心だったので、まとまった講演が楽しみでした(笑)

シビックテックフォーラム プレミートアップで登壇中のクリストファー・ウィテカー氏

シビックテックフォーラム プレミートアップの様子
 
ウィテカー氏自身はエンジニアではありませんが、シビックテックのイベント「OpenGov Hack Night」を共同運営者としてシカゴで毎週開催しているなど、エンジニアやデザイナー、市民団体、行政などを結びつける活動に取り組んでいます。

Open Gov Hack Night from The Grid on Vimeo.

 
また、Code for Americaが世界のさまざまなブリゲイドネットワークとつながっていることも紹介してくれました。

Code for Americaは世界のさまざまなブリゲイドネットワークとつながっている
 
来日講演のエッセンスが詰まったスライドも日本語版が公開されているので、ご興味をお持ちの方はぜひご覧ください。

 
 

コレクティブ・インパクトの必要性、シビックテックの未来

 
シビックテックフォーラムで様々な登壇者の話を聴きながら僕の頭を何度もよぎった言葉があります。それがコレクティブ・インパクト(Collective Impact)です。

特定の社会課題に対して、ひとつの組織の力で解決しようとするのではなく、政治・行政、企業、NPO、市民などがセクターを越え、互いに強みやノウハウを持ち寄って、同時に社会課題に対する働きかけを行うことにより、課題解決や大規模な社会変革を目指す「コレクティブ・インパクト」。

ビジネスセクターのみならず、政治・行政、非営利の垣根を超えて社会課題の解決に取り組むことの必要性はさらに高まっているのでしょう。

<参考記事>
新しい課題解決手法「collective impact」の可能性と中間支援組織に期待される役割

 
同時に想起されたのが、地方創生の取り組みの一環で、若い国家公務員が東北で副市長として活躍したモデルケースを全国に広げるべく始まった「地方創生人材支援制度」。日本版シティマネジャー制度です。

釜石市の嶋田前副市長がモデルとなり、小泉進次郎 復興大臣政務官が立ち上げに奔走した話はRCF代表の藤沢烈さんからも聴いていて、個人的にも注目しています。

<参考記事>
日本版シティマネジャー制度あらため、地方創生人材支援制度で、五万人以下の自治体に派遣される69名

 
また海外、特にアメリカのシビックテックのトレンドを改めて振り返ってみると、米国政府デジタル・サービス(The US Government Digital Service)の設立、元Google幹部のミーガン・スミス(Megan Smith)氏のホワイトハウスCTO就任をはじめ、テクノロジーやシビックイノベーションに関する話題は枚挙に暇がありません。

ビジネスセクター、政治・行政、そして非営利の垣根を超えてトライセクターで活躍する人材の重要性もさらに高まるはずですよね。僕たち夫婦2人もその役割を担えるよう、これからも頑張りたいと改めて思う時間になりました。

<参考記事>

企業、政府、非営利組織の垣根を超えて活躍するトライセクター・リーダー

NPOマーケティング、社会起業家支援、トライセクターなど、2015年に注力したいこと

 
6月にはSocial Company市川さんがニューヨークに飛び、行政・政治・市民参画に関する国際会議「パーソナル・デモクラシー・フォーラム(Personal Democracy Forum)」に参加されるとのこと。

僕たちは残念ながら行けないのですが、ぜひ帰国報告会を開催させてください! お話を楽しみにしております!

<帰国報告会を記事化しました!(2015年7月20日)>
世界の最新事例が結集したPersonal Democracy Forum帰国報告会 〜テクノロジーで変える政治と市民社会

 
 

シビックテックのNEXT STEP、ITとローカルコミュニティの融合

 
さて、多くのセッションが2会場で同時進行していたため、聴きたかったセッション全てに参加できたわけではない(夫婦で分担してましたがw)のですが…

この記事の最後に、僕たちが参加できなかったり、残念ながら途中離脱してしまったセッションに関しても、簡単にご紹介させていただきます。

シビックテックのNEXT STEPをテーマにしたパネルディスカッション

「シビックテックのNEXT STEP」をテーマに、シビックテック分野でビジネスを立ち上げ、継続してきている4名が登壇したセッションの動画アーカイブはこちら。


 
ローカルコミュニティを育て方が語られた「ITとローカルコミュニティとは融合する!?」のセッションもとても刺激的でした。別件で途中離脱となってしまったのが残念…

ITとローカルコミュニティの融合をテーマにしたセッション
 
また、Code for Japanの関さんが登壇した「シビックテックは何をもたらすのか 〜オープンソース文化とシビックテックがもたらす共創社会」のオープニングセッションや「地域を支えるコミュニティの変遷とこれからの姿 〜産官民の関わり合いにいま起きている変化」の基調講演、そして「公共とITのあたらしい関係」をテーマにしたパネルディスカッションの様子は、以下の記事でも紹介されてます。

<参考URL>

いま、シビックテック普及に必要な考え方—地道な対話を通じて「公共」や「コミュニティ」を共通言語にするということ(講談社・現代ビジネス)

ITで地域のつながりをバージョンアップすることに挑戦する人たちと「共」の力を考える(マチノコト)

CIVIC TECH FORUM 2015 特設サイト(finder)

 
シビックテックフォーラム 2015の動画アーカイブはこちらです。全部で7時間40分の動画なので、ご覧になりたいパートを探してぜひ。

 
最後に、今回のシビックテックフォーラムにおける特筆すべき取り組みの1つは「グラフィックレコーディング」でしょう。こんな風に、各セッションの内容がイラストや図解でリアルタイムに記録されてました。

シビックテックフォーラムにおけるグラフィックレコーディング1

シビックテックフォーラムにおけるグラフィックレコーディング2 
グラフィックレコーディングがこうやってまとまっているのも嬉しいですね。運営の皆さん、ありがとうございました!


 
<今回の内容と近いテーマの記事>

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加藤たけし&佐藤茜(@AkaneSato)夫婦2人の情報発信

インターネット、マーケティング、テクノロジー、コミュニティデザイン、NPO、地域活性、海外、新しい働き方などのテーマにおいて、加藤たけし&佐藤茜( @AkaneSato )の夫婦2人で情報発信しています。

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ABOUT ME
加藤 たけし
デジタルマーケティングのコンサルタント。民間企業の週3正社員&文部科学省 大臣官房 広報戦略アドバイザー(非常勤国家公務員)の官×民 複業中。慶應SFC卒。1歳児の父。育休7カ月。准認定ファンドレイザー。座右の銘:「ひとりじゃできないこと、みんなでやる。」より詳細なプロフィールや連絡先はこちら ↓
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