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NPOアカデミー:Webマーケティング戦略ケーススタディ 〜かものはしプロジェクト・PLAS〜【イベントレポート】

かものはしプロジェクト小畠さん、NGO・PLAS門田さん、加藤たけしさんが登壇したNPOアカデミー

かものはしプロジェクト小畠さん、NGO・PLAS門田さん、加藤たけしさんが登壇したNPOアカデミー 
先日、第1回目の続編となる第2回目のNPOアカデミーの講座が開催されました。

前回に引き続き、今回もNPO法人 e-Educationインターン生の越村麻里さんが参加し、イベントレポートを書いてくれたので、寄稿記事としてアップします。かなりの大作記事です!

「かものはしプロジェクト」と「NGO・PLAS」、Webマーケティング先進NPO2団体の事例にご興味をお持ちの方はぜひ。(加藤 たけし)

【イベント概要】
NPOアカデミーに登壇します!
フローレンス、かものはし、e-Education、PLASのWebマーケティング事例をご紹介

【第1回目イベントレポート】
ソーシャルメディア活用、Webマーケティング戦略入門

【第3回目イベントレポート(8月30日 追記)】
Webマーケティング戦略ケーススタディ 〜フローレンス・e-Education〜
http://atcafe-media.com/2015/08/30/npo-academy-3/

 
 

WEB・ソーシャルメディアのマーケティング戦略の作り方

 
先日、NPOサポートセンター主催「NPOアカデミー 〜プロフェッショナル・スタッフのためのSummerセミナー〜」が提供する講座の1つ、「WEB・ソーシャルメディアのマーケティング戦略の作り方」という全3講座の第2回目が開催されました。

第1回目の「ソーシャルメディア活用、WEBマーケティング戦略入門」に続く第2回目のテーマは「Webマーケティング戦略ケーススタディ Part1 〜行動喚起・クチコミ促進編〜」

かものはしプロジェクト小畠さん、NGO・PLAS門田さん、加藤たけしさんによるトークセッション 
講座は次のような内容で進行されました。

1. マーケティング戦略策定フレームワークについて(加藤たけしさん)

2. ファンドレイジングができるWebサイトの作り方(かものはしプロジェクト 小畠さん)

3. データベースを活用したWebマーケティング(NGO・PLAS 門田さん)

4. トークセッションとまとめ、質疑応答

 
ということで、今回はゲストにかものはしプロジェクト 広報・ファンドレイジング担当の小畠 瑞代 さんと、エイズ支援NGO・PLAS 代表理事の門田 瑠衣子 さんをお迎えし、実際に取り組んでいらっしゃるマーケティング事例について具体的に講義していただきました。

今回もわたくし越村麻里が参加させていただきましたので、その様子をご紹介します!
 
 

マーケティング戦略策定フレームワークについて

 
まず、加藤さんから前回のおさらいが。詳しくは 第1回「ソーシャルメディア活用、WEBマーケティング戦略入門」のレポート記事 をご覧ください。

そして今回は、上記記事で紹介した「マーケティング戦略策定のフレームワーク」をもとに、「行動喚起」と「クチコミ促進」をメインに、かものはしプロジェクトとNGO・PLASの実例を2人のゲストがお話ししてくださいました。

マーケティング戦略のフレームワーク
 
 

ファンドレイジングができるWebサイトの作り方(かものはし小畠さん)

 
かものはしプロジェクト 広報・ファンドレイジング担当職員 小畠 瑞代 さんからは、Webを通した行動喚起についてお話していただきました。

まずは、小畠さんのプロフィールをご紹介。

かものはしプロジェクト小畠さん

かものはしプロジェクトで当初困っていたことは、多くの団体が直面する壁でした。それは「Webをどうやってファンドレイズで活用していくか」ということです。

Facebookのいいねを増やしても、Twitterでフォロワーを増やしても、肝心のファンドレイジングにつながらなくては意味がない…
 
そこでかものはしでは、Webを運用する目的をとことん掘り下げていったそうです。そしてたどり着いたのは「イベントへの集客」でした。

かものはしプロジェクト小畠さんによる「ファンドレイジングができるWebサイトの作り方」
 
どういうことかというと、「Webへの訪問者数を増やす」ことによって「イベントの参加者を増やす」こと、そして最終的に「寄付会員を獲得する」という流れを明確にイメージして戦略を立てることにしたのです。
 
かものはしプロジェクト小畠さんのお話

データを分析してみると、イベント経由の寄付会員獲得率が高いことは明らかでした。そこで、Webからイベントへの誘導を強化するようにしたとのことでした。
 
まず具体的に行ったのは「ブログの強化」。

たとえば、ブログの記事の質を上げたり(量より質を重視)、進捗管理・数値管理を行ったり、細かいABテストやSNS拡散を行ったかものはし。Webの最終目標である「イベントへの集客」のため、以下3つの施策も行いました。

1. 記事の中でのイベントへの動線を作る
2. ターゲットごとのイベントの細分化
3. 申し込みフォーム改善

具体的には、ブログの最下部に「もっと詳しく知りたいあなたへ」という欄を埋め込み、興味がある人がイベントに来てもらいやすいようにしたり、申し込みフォームをセールスフォースと連動させたり。
 
そして、これらの取り組みをした結果、1カ月あたりのイベント参加者数は、次の図のようになりました。
 
かものはしプロジェクト小畠さんのお話2

Webからのイベント参加者が圧倒的に多くなり、Webの目標である「イベントへの集客」が強化されたのです。

さらにブログの改善を行った結果、Facebookのいいね!数が1,000を超えるヒット記事も生み出せたとのこと。
 
最後に、小畠さんは次のようにまとめていました。

かものはしプロジェクト小畠さんのまとめ

ゴールを明確にする。Webをどういう目的で活用するかをはっきりさせる。
そして、優先順位を決め、やれることを行い、PDCAサイクルを回すということでした。
 
 

データベースを活用したWebマーケティング(PLAS門田さん)

 
かものはしプロジェクトの小畠さんに続いて、エイズ孤児支援NGO・PLASの門田瑠衣子さんからは、データベースを活用したWebマーケティング「小さいリソースで大きな成果を生み出すマーケティング志向」をテーマにお話しいただきました。

まずは、門田さんのプロフィールをご紹介。

NGO・PLAS門田さん
 
「セールスフォース活用自慢チャンピオン大会」というセールスフォースのユーザー大会で第2位に表彰されるほど、セールスフォースをうまく活用されているPLAS。

当初、セールスフォース導入にあたって以下2つを行ったとのことでした。

1. 現状分析
2. ターゲットの設定

どのような形で寄付が獲得できているのかを見える化し、まずターゲットを設定しました。

NGO・PLAS門田さんのお話1

そして、これまでのデータを参考にしながらペルソナ像をつくり、それをもとにしてセールスフォース活用に取り組んだところ、次の4つの効果があらわれたそう。

1. 支援者増が見えた
2. 業務効率化
3. マーケティング活用
4. 寄付の拡大
 
セールスフォースを導入したことによって、支援者の様々なアクション履歴が統合されていき、支援者の方に対して、過去履歴を考慮しながら丁寧に対応することが可能になりました。

たとえば次のような対応です。

NGO・PLAS門田さんのお話2

そして、業務効率も大きく改善されました。

ドナーピラミッドとして、支援者を10段階の支援フェーズに分けて考えたうえで、イベント申し込み、問い合わせ、資料請求、メルマガ登録・解除等のアクションをすべてセールスフォースをつなぎこむことにより、支援者ごとのニーズに合わせたコミュニケーションがとれるようになりました。
 
他にも、クレジット決済システムとセールスフォースのつなぎ込みを実現するなどによって、なんと! 年間240時間もの業務時間を削減することができたそう。

NGOやNPOなどは大体常に人手不足。でも、セールスフォース導入でこんなに時間が節約できるのは素晴らしいですよね!
 
また、PLASのセールスフォースを活用したマーケティングの取り組みもとても素晴らしいものでした。

寄付に重要な施策は3つ。

1. 主催イベントの開催
2. メールマガジンによるロイヤルティ向上
3. メール等による寄付の依頼キャンペーン

PLASでは、主催イベントを「種別」「開催形式」「コンテンツ分類」等にわけて寄付獲得の分析を行いました。すると、意外な結果が出たとのこと。

NGO・PLAS門田さんのお話3
 
「NGOと企業連携」や「エイズ孤児について」のイベントでは寄付のコンバージョン率があまり良くなく、「国際協力のキャリア形成」や「団体の設立経緯」、「登壇者のライフヒストリーと思い」の方が寄付のコンバージョン率が良かったのです。

この結果から、開催回数の多い定例の活動報告会の内容を改定し、寄付のコンバージョン率を上げることに成功しました。
 
またメールマガジンでは、普通のテキストメールよりも画像などが挿入されたHTMLメールの方がクリック率が高いことから、形式をHTML形式に変更したり、配信時間もクリック率がもっとも高い時間帯に変更したり。

NGO・PLAS門田さんによる「データベースを活用したWebマーケティング」
 
寄付の依頼キャンペーンでは、右脳型メッセージ、つまりストーリー性を重視したメールの方が寄付の成約率を5倍も引き上げたそう。

他にもPLASでは、メールでの寄付依頼キャンペーンで細かなABテストも行っています。弱気のメッセージがいいのか、それとも強気のメッセージがいいのか…など、仮説を立てて結果を分析することで、潜在的支援者層によりアクションをしてもらいやすい文章をつくることができているのだと実感しました。
 
 
※門田さんはセールスフォース活用自慢チャンピオン大会準優勝時の資料をはじめ、講演スライドをslideshareで公開してくれていることが多いです。以下にその一部をご紹介しますので、よろしければぜひご覧ください。


 

マーケティング先進NPOはやっぱり、「目的」を明確に定めて「PDCA」サイクルを回し続けていた!

 
また終盤には加藤さんがモデレーターとなり、かものはしプロジェクト小畠さん&NGO・PLAS門田さんに質問を投げかけるトークセッションも。

かものはしプロジェクト小畠さん(右)とNGO・PLAS門田さん(左)
 
今回のお話を聞いて立ち返ってみると、大切なことはやっぱり次の3つでした。

NPOのWebマーケティング、3つの大切なこと

しっかりと目的を定めること。その目的のためには何が必要で、何をすべきかをはっきりさせること。そして、PDCAサイクルを回し続けて、結果を得るまで努力していること。

これは講座の第1回目から加藤さんが繰り返しおっしゃっていることですが、かものはしプロジェクトとNGO・PLASの両団体ともに共通していたポイントです。
 
かものはしプロジェクトやNGO・PLASのように、一歩先行くマーケティングを実践している団体の話を聞けたので、自分たちの団体もTTP(徹底的にパクる)して、マーケティングを頑張っていきたいと改めて思いました。

登壇されたかものはしプロジェクト小畠さん、NGO・PLAS門田さん、そして加藤たけしさん。貴重はお話をありがとうございました!

かものはしプロジェクト小畠さん、NGO・PLAS門田さん、加藤たけしさん(登壇されたお三方)
 
次回は3回連続講座の最終回、「Webマーケティング戦略ケーススタディPart2〜「認知獲得」「活動理解」編〜です。「フローレンス」と「e-Education」の取り組みを通してマーケティングを学べる講座、今回もとても楽しみですね。

NPOのWebマーケティング・ソーシャルメディア戦略のつくり方 
講座は最終回のみでも受講できるので、興味をお持ちの方はぜひ以下をチェックしてみてください!

■NPOアカデミーの特設サイトは こちら
 
 
ライター:越村 麻里(NPO法人e-Education インターン)

越村麻里_プロフィール慶應義塾大学文学部図書館情報専攻3年。ソーシャルデザインやフェアトレードなどに関心がある。

「Huglobe!(はぐろぶ)」 でのインターンを経て、トジョウエンジン編集インターンに。現在はSNS運用も担当している。

Facebookアカウント:https://www.facebook.com/mari.koshimura.75
 
 
<NPOのWebマーケティングに関して>

以下はNPOサマースクールの講演スライドです。微力ではありますが、できる範囲でNPOの方々のお力になれればと思っていますので、何かあればいつでもお声がけください。

NPOサマースクール2015 公開用資料
 
 
<今回の内容と近いテーマの記事>

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加藤たけし&佐藤茜(@AkaneSato)夫婦2人の情報発信

インターネット、マーケティング、テクノロジー、コミュニティデザイン、NPO、地域活性、海外、新しい働き方などのテーマにおいて、加藤たけし&佐藤茜( @AkaneSato )の夫婦2人で情報発信しています。

更新情報は以下からもぜひ。
 

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ABOUT ME
加藤 たけし
デジタルマーケティングのコンサルタント。民間企業の週3正社員&文部科学省 大臣官房 広報戦略アドバイザー(非常勤国家公務員)の官×民 複業中。慶應SFC卒。1歳児の父。育休7カ月。准認定ファンドレイザー。座右の銘:「ひとりじゃできないこと、みんなでやる。」より詳細なプロフィールや連絡先はこちら ↓
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