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NPOのソーシャルメディア担当者が語った、ファン数3万を超えるFacebookページ活用事例【イベントレポート】

NPOサポートセンターが主催する「NPOアカデミー」

 
NPOサポートセンターが主催する「NPOアカデミー 〜プロフェッショナル・スタッフのためのSummerセミナー〜」という研修プログラムのうち、実践者が最新事例を紹介「日本のNPOのコンテンツマーケティング」というテーマの講座に参加してきました。

カタリバとWWFジャパンのお二方によるパネルディスカッションの様子 
今回のNPOアカデミーには、NPOの業務改善や組織デザインなど、他にも14テーマ計27もの専門講座があり、実は僕も 最新事例とツールを学ぶ「NPOためのソーシャルメディア・マーケティング」というテーマで2つの講座を担当させていただいています。

NPOのソーシャルメディアマーケティング講座で登壇させていただきました 

<参考記事>
僕が担当させていただいた2講座に関して、参加者の方が詳細にまとめてくれてます!

国内外のソーシャルメディア、デジタルマーケティング最前線
http://bokunani.com/2014/07/29/npo-snsmtg/

NPOのためのFacebookページの運用と戦略立案のポイント
http://bokunani.com/2014/08/06/npo-snsmtg2/

 
今回は「先行事例パネルディスカッション」ということで、Facebookページのファン数が3万人を超える2団体(認定NPO法人カタリバWWFジャパン)のソーシャルメディア担当者が登壇。僕も一人の参加者として話を聞いてきたので、その様子を簡単にレポートしようと思います。
 
 

ファン数3万を超えるカタリバ、WWFジャパンのFacebookページ

 
ファン数3万を超えるカタリバ、WWFジャパンのFacebookページ

はじめに、先行事例パネルディスカッションに登壇されたお二方、そして担当しているFacebookページを簡単にご紹介します。ちなみに、カタリバやWWFジャパンの団体自体のことは参加者ほぼ全員が知っていたようですが、ソーシャルメディア担当者である長井さん、増本さんの方を事前に知っていた方はほとんどいませんでした。

たしかに、NPOのソーシャルメディア担当者が表に出てくるケースはまだまだ少ないですよね。そういう意味でも、とても貴重な機会となったのではないかと思います。
 
認定NPO法人カタリバ 広報・ファンドレイジング部の長井 帆菜さんということで、1人目はWWFジャパン 広報室の増本 香織さん。2013年6月よりWWFジャパン広報室にてウェブサイトとソーシャルメディアの管理運用を担当していらっしゃいます。


 
認定NPO法人カタリバ 広報・ファンドレイジング部の長井 帆菜さんまた2人目は、認定NPO法人カタリバ 広報・ファンドレイジング部の長井 帆菜さん。2013年8月からカタリバの広報・ファンドレイジング部でWebのディレクションやソーシャルメディア運用、イベントの運営など、多岐にわたる業務を担当しているとのこと。


 
お二人に関しては、NPOサポートセンターの笠原さんがインタビュー記事を執筆してくれていますので、ぜひ以下の2記事をご覧ください。

<NPOアカデミー講師:インタビュー記事>

情報過多の時代であなたの情報発信は埋もれていないか。人々の記憶に残るWWFジャパンのFacebook戦略
NPOアカデミー講師:増本 香織さんインタビュー
http://blog.canpan.info/nposc/archive/607

3万5千いいね越え!広報・ファンドレイジング部が明かす、認定NPO法人カタリバのFacebook運用の実態
NPOアカデミー講師:長井 帆菜さんインタビュー
http://blog.canpan.info/nposc/archive/610

 
僕自身、本業で企業のソーシャルメディア活用をご支援していたり、SVP東京のパートナーとしてNPOのマーケティング支援をしていることもあり、NPOの方々への講演や勉強会、個別の相談会などを行うことも少なくありません。

しかし、自分自身が実際にNPOでソーシャルメディアの運用を担当しているわけではないので、こうした話を聴ける機会はやっぱり貴重だなぁと思います。他の参加者の皆さんにとっても、増本さん&長井さんの現場感のある話はとても勉強になったのではないでしょうか。 
 
さて、具体的にはどのような話がされたのか。ダイジェストでお届けしたいと思います。
 
 

認知層をサポーター層に引き上げるためのWWFジャパンのFacebookページ運用

 
WWFジャパン増本さんの講演

WWFジャパンの増本さんからはまず、WWFジャパンの団体概要に続いて、WWFジャパンが活用しているソーシャルメディアの紹介がありました。今回のテーマとなっているFacebookページはもちろん、Twitter、Google+、YouTube、mixi、そしてLINEも活用しているとのこと!

これら6つのソーシャルメディア活用に乗り出している組織は、ビジネスセクターでもまだそこまで多くはないでしょう。すごいっ!
 
WWFジャパン増本さん2

また、WWFジャパンのFacebookページ運用における目的も非常に明確でした。その目的は「認知層をサポーター層に引き上げる」こと。WWFジャパンのことを知ってくれている「認知層」に対して、ユーザー起点の発信によりマインドシェアを高め、金銭的な支援をしてくれる「サポーター層」になってもらうという流れを強く意識していらっしゃるようです。
 

 
たとえばこの写真投稿では、以下のような3ステップでストーリーが構成されてます。

1. かわいらしい子ゾウの写真、そして1歳の誕生日という話題で興味喚起
2. 子ゾウが暮らすスマトラの森の現状、WWFの活動を伝える
3. より詳細な情報がまとまっているブログ記事、動画へと誘導する

もちろん、ダイレクトにサポーターを増やすための投稿をするわけではなく、WWFの理解や信頼関係を醸成することに注力しているとのこと。「寄付をしよう」と思った時に思い出してもらえるように関係構築をするためのFacebookページ、と何度もおっしゃっていたのが印象的でした。
 

 
そして、こんな投稿も。WWFシンガポールのFacebookページで投稿されていた画像らしいのですが、「How many pandas can you spot?(いくつパンダが隠れてる?)」というクイズ形式の投稿です。遊び心があっていいですね^^

WWFのロゴマークでもおなじみのパンダに関するこの画像、実は「風刺画」なんです。

画像の右下をよく見ると、小さく「It’s getting harder to find them.」と書かれています。どういうことかというと、現在のジャイアントパンダの推定個体数はおよそ1,600頭あまりと言われ、世界的に見ても、絶滅の恐れが高い哺乳類の一種。つまりこの画像は、生息地の減少や密猟によって個体数を減らしている、地球上の野生生物の危機を模した風刺画とのことでした。 
 
 
そしてそして…なんと、404 Not Foundのエラーページが「404絶滅動物図鑑」に!

 
以下URLをクリックすると、「404絶滅動物図鑑」ということで、絶滅してしまった鳥のイラストと「世界中を探しても見つけることはできません」という一言が添えられたページが3パターンランダムで表示されるようです。

http://www.wwf.or.jp/404/

希少な野生動物の保護はWWFの大切な活動ですし、野生生物の絶滅について、認識を新たにする機会にもなる、非常にユニークな取り組みだなぁと思いました。
 
カタリバとWWFジャパンのお二方によるパネルディスカッション

他にも、活動紹介やスタッフブログ、時事ネタ、支援のお願い、そして定番の「今日の一枚」シリーズなど、それぞれの投稿における目的を強く意識していることが伝わってくるお話ばかりでした。ファンを獲得するための広告は一切使わず自然増のみとのことですし、目的を意識した地道な運用の成果、なんですね。

WWFジャパンの増本さん、貴重なお話をありがとうございました!
 
 

Facebookページの投稿に対する反響を他のオンライン施策に連携させているカタリバ

 
続いて、カタリバ広報の長井さんからのお話です。カタリバのFacebookページは、主に以下の3つを目的として運用されているとのこと。

1. 寄付者を集める
2. キャスト(ボランティア)を集める
3. 寄付者や興味を持っていただいている方に定期的に情報を届ける
 
この3つの目的を意識しながら、Facebookページの1投稿につき3人のカタリバスタッフが関わっているようです。1人目は広報ではなく、実際に現場で働く方。あとの2人は広報・ファンドレイジング部のスタッフで計3人。

まずは現場スタッフが、現地の様子を伝えるためのブログを執筆します。その内容をもとにして1人目の広報部スタッフがたたき台を作成し、2人目のチェックを経て1人目が投稿するとのこと。

投稿後に修正するなどの手間を減らすためにも、そして何より、良いコンテンツを作成するためにも、この「チェック」というプロセスは欠かせないとおっしゃっていました。

カタリバ広報・ファンドレイジング部の長井さん 
また非常に印象的だったのが、カタリバではブログ、Facebookページ、メルマガなどの各オンライン施策を横連携させているということが挙げられます。具体的には、1つのブログ記事が起点となってFacebookページの投稿が作成され、ファンからの共感が多く集まった投稿についてはメルマガにも掲載するようにしているとのことでした。
 
同様に、シェアやいいね!が多くついた人気の写真に関しては、他のオンライン施策にも活用しているようです。たとえばこの写真。

 
キャスト(ボランティア)の素敵な笑顔が見える写真は、ボランティアスタッフを募集するための投稿に。
 

 
現地の様子がパッと見てわかるこの写真は、寄付を募集するための投稿に使ってますね。PDCAサイクルを意識しながら運用を続けていることの成果と言えるでしょう。 
 
他にも「キャッチーな文面にする」「URLを文頭に持ってくる」など、カタリバがFacebookページのコンテンツを作成するうえで意識していることをいくつかお話しいただきました。こういったテキストライティングの工夫はすぐにできるので、早速試している参加者の方もいるかもしれませんね。
 
カタリバとWWFジャパンのお二方によるパネルディスカッション2

また、この日のテーマからは少し逸れることもあって多くは語られませんでしたが、ブログ、メルマガやステップメールなど、各オンライン施策に多くのノウハウがカタリバの組織全体に蓄積されていっていることが垣間見えました。この辺りのお話はまた別の機会にお聞きできると面白そうです。

カタリバとしては今後、スタッフの情報発信や寄付者のストーリー紹介など、新しい試みも検討中とのこと。個人的にもすごく楽しみにしています。

カタリバ広報の長井さん、貴重なお話をありがとうございました!
 
 

ソーシャルメディア運用に悩んでいるNPOの現場の人が情報交換する場の必要性

 
ということで、WWFジャパンの増本さん、カタリバ 広報・ファンドレイジング部の長井さんのお話をダイジェストでまとめました。

パネルディスカッションも、今回のNPOアカデミーの事務局を務めているNPOサポートセンター笠原さんの軽快なトークで進められ、会場の方々からも多くの質問が。講座が終了してからも1時間ほどは登壇者のお二方と参加者の皆さんの名刺交換、質疑応答が続くなど、大盛況なイベントでした。

NPOサポートセンターの笠原さんもモデレーターとして参加
 
それとともに、僕個人としては、ソーシャルメディア運用に悩んでいるNPOの現場の人同士が情報交換する場の必要性を強く感じる機会になりました。もちろん、インターネット上にこういう情報があるのですが、実際に現場で日々試行錯誤している方たちにとっては、さらに踏み込んだ話も知りたいですよね。

<参考記事>

e-EducationがFacebookページの運用で意識している3つのこと
http://eedu.jp/blog/2013/04/19/facebook-page-2000fans/

参考にすべきNPOの“5000いいね!”を超えるFacebookページ13選+α
http://www.tentosen.org/2012/10/24/npo_fecebook_best13/

NPOのfacebookページ運用ガイド
http://www.littleshotaro.com/archives/750

Facebookでソーシャル戦略を成功させているNPO法人の秘密
http://diamond.jp/articles/-/12882

 
NPOのソーシャルメディア担当者が集う機会は、今後もっと増えていくのではないでしょうか。僕もそういう機会にもっと関われるといいなぁと改めて思いました。
 
 
また、「NPOのためのIT活用講座」や「NPOのためのマーケティング講座」といった書籍も、この分野の情報収集をしている方にとっては必読の一冊と言えるでしょう。

「NPOのためのマーケティング講座」は10月1日発売ですが、「NPOのためのIT活用講座」はすでに発売されてます。ご興味をお持ちの方はぜひ。

 
この記事の最後に、ご登壇された増本さん&長井さんの2ショット写真を。本当にありがとうございました!

認定NPO法人カタリバとWWFジャパンのお二人 
 
<今回の内容と近いテーマの記事>

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インターネット、マーケティング、テクノロジー、コミュニティデザイン、NPO、地域活性、海外、新しい働き方などのテーマにおいて、加藤たけし&佐藤茜( @AkaneSato )の夫婦2人で情報発信しています。更新情報は以下からもぜひ。
 

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加藤 たけし
デジタルマーケティングのコンサルタント。民間企業の週3正社員&文部科学省 大臣官房 広報戦略アドバイザー(非常勤国家公務員)の官×民 複業中。慶應SFC卒。1歳児の父。育休7カ月。准認定ファンドレイザー。座右の銘:「ひとりじゃできないこと、みんなでやる。」より詳細なプロフィールや連絡先はこちら ↓
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