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来日講演中のリンダ・グラットンさん

来日講演中のリンダ・グラットンさん


 

ライフシフト(LIFE SHIFT)のテーマは「長寿化時代の人生戦略」

 
ベストセラー「ワークシフト」や「未来企業」の著者リンダ・グラットンさんの新刊「ライフシフト LIFE SHIFT」。「ワークシフト」は「新しい働き方」、「未来企業」は「新しい企業のあり方」に関する本でしたが、「ライフシフト」は、「長寿化時代の人生戦略」がテーマとのことで、今回も手に取ってみました。

「ワークシフト」に引き続き、読んだ後、これから自分がどう生きていけばいいかの道筋がよりクリアになり、未来により希望が持てるような、そんな気分になる本でした。

本書の冒頭に、こんな一文が出てきます。

2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107年以上生きることが予想される。いまこの文章を読んでいる50歳未満の日本人は、100年以上生きる時代、すなわち100年ライフを過ごすつもりでいたほうがいい。

いま9歳の子は、107歳まで生きる。100歳を超える年齢の方と接したことがない私でも、この言葉でぐっと自分たちの長寿化が身近なことのように感じられます。
 

また、この本では、より具体的にこれからの生き方をイメージしてもらうための工夫として、3人の架空の人物が登場します。

・ジャック(1945年生まれ、71歳)
・ジミー(1971年生まれ、45歳)
・ジェーン(1998年生まれ、18歳)
※2016年現在

年齢が近い人物に自分を投影することで、より自分ごととしてこれからの変化が自身に及ぼす影響を想像することができます。私はジミーとジェーンの真ん中くらいの年齢なので、両方を参考にしながら読んでました。
 
 

ライフシフト(LIFE SHIFT)のエッセンス

 

■「3ステージ」の生き方の終わり

 
本書の基本となる考え方は、「教育→仕事→引退」という、「3ステージ」の生き方はもう通用しない、というものです。

日本でもお馴染みの、20歳前後まで学校に通い教育を受け、就職してからは休みなく60代まで働き、引退後は基本的にのんびりと過ごす、という3つのステージを順にたどる生き方ではなく、様々な状況を行ったり来たりする、もしくは同時並行で行う「マルチステージ」の生き方をするようになるだろう、と予測されています。

長寿化するなら、その分長く働くことになるだろう、というのは予測がつきます。しかし、仕事のステージを長くするだけでは、疲弊してしまいますし、人生の初めの段階で受けた教育だけでは知識が陳腐化していきます。

 
従来の3ステージの代わりに本書で提案されているのは、以下の3つのステージです。

 
❏エクスプローラー(探検者)
様々な可能性を試す、探検・探索の時期。具体的には、新しい町に移ってその土地の人達と知り合ったり、知らない国を旅して自分の生き方について考える…という時期を指すそうです。知識やスキルの再習得に取り組む時期も含まれます。

このステージに適した時期として、18〜30歳くらいの時期、40代半ばの時期、70〜80歳の時期が紹介されていました。

私は26歳の時にニューヨーク、28歳の時にサンフランシスコにそれぞれ3ヶ月くらい滞在しているので、そこがエクスプローラーの時期に該当しそうです。

<参考記事>
サンフランシスコ・シリコンバレーで感じた「未来」

 
❏インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)
組織に雇われず、独立した立場で生産的な活動に携わる人達のこと。いわゆるスタートアップの起業家とは違い、会社を大きくすることや売却することは望んでいません。フリーランス的な感じですね。
 
❏ポートフォリオ・ワーカー
異なる活動を同時並行で行う時期。例えば、有給の仕事が週3日、1日は地域コミュニティのボランティア活動、1日はNPOの理事会に出席…という形です。活動の「切り替えコスト」が発生するので、全く種類の違う活動でポートフォリオを組むより、共通する部分の多い活動にした方がよさそうです。
 

共通する部分も多い3つのステージですが、今後は人生のうちで何度もこの各ステージを行ったり来たりするようになるだろう、ということでした。
 

「マルチステージの人生を描こう」 by リンダ・グラットンさん

「マルチステージの人生を描こう」 by リンダ・グラットンさん

 

■人生100年時代に必要な3つの「無形資産」

 
こういったステージの移行を実現するには、お金ももちろん必要ですが、お金に換算できない無形の資産も重要になってきます。

本書では、100年ライフを送るのに必要な無形の資産を以下の3つのカテゴリーに分類していました。長くなるので箇条書きで紹介しておきます。
 

❏生産性資産
仕事で成功し、所得を増やすのに役立つ要素
・スキルと知識
・仕事仲間
・評判
 
❏活力資産
肉体的・精神的な健康と幸福
・健康
・バランスの取れた生活
・友人関係
・パートナーや家族との良好な関係
 
❏変身資産
人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力
・自分についてよく知っていること
・多様性に富んだ人的ネットワーク
・新しい経験に対して開かれた姿勢
 
 

■「パートナーとの関係」がより重要に

 
既にそうなりつつありますが、100年ライフにおいては、生涯に渡って1つの会社だけで働く、というケースが少なくなりそうです。そうなると人間関係において、ますます家族との関係が大切になってくると思われます。

特に、人生に占めるパートナーと過ごす時間の割合が今より大幅に増えるのではないでしょうか。
 
以下、長いですが、本書の「未来の人間関係」の章からの引用です。

マルチステージの人生を生きる人は多くの移行を経験するが、移行を成功させるのは簡単でなく、サポートが欠かせない。その点、スキルを更新し、新しい試練に挑み、新しい人的ネットワークに投資することは、パートナーとの緊密な協力関係があれば格段に実行しやすくなる。質の高いパートナー関係が重要になるのは、そのためだ。

そうしたパートナーがいれば、長い人生を通じて情緒面での支えになり、難しい決断をする際に意見と率直な批判を聞かせてくれる。そして、二人で助け合いながら、本当に大切なことに注意を払い、時間とエネルギーの割り振りを決め、健康な生活を送り、仕事、旅行、家計、地域コミュニティへの関わり方について慎重に選択をおこなえる。ときには、厳しい選択もする。このような関係を機能させるためには、長期にわたって相手と深く関わろうとする意思と、資源の分配の仕方を交渉して決めるためのスキルと能力がひときわ必要になる。

私たち夫婦も、100年時代を想定していたわけではないのですが、お互いのキャリアや今後のことについて話し合う時間をよく持つようにしています。

以下は、以前、夫婦で実施している「夫婦未来会議」について夫がインタビューいただいた際の記事です。

「夫婦未来会議」―パートナーの壁を乗り越える秘訣とは

 
夫婦で人生戦略を考えたい方には、こちらの本もおすすめです。

これからの時代の結婚のバイブル:2人が「最高のチーム」になる― ワーキングカップルの人生戦略

 

■人生100年時代への変化、その光と影

 
本書は基本的に、人生100年時代を迎えるにあたってのポジティブな側面に光を当てていますが、もちろん課題についても言及しています。
 
たとえば、高所得層の平均寿命は低所得層より長いという傾向がありますが、長寿時代になるとこういった健康格差がさらに広がる恐れがあります。

また、上記のような新しい3ステージの移行には、有形・無形資産を投資していくことが必要になりますが、これをどれだけ持っているかにも生まれた時点で格差があり、長い人生を経るとますます有形・無形資産の格差が拡大する可能性が高いです。

パートナーが重要とも書きましたが、近年、パートナーがいない人や別れる人(離婚)も増えています。
 
ただ、本書でも言及されていましたが、進学や就職といった人生のステージの変化と年齢との関係が薄くなっていくので、挽回のチャンスも多くなるだろうという点がひとつの希望だと思いました。

政府や企業の変化は個人の変化よりも遅いですが、適切なセーフティーネットや制度が作られていくことを期待したいと思います。
 
 

■終わりに

 
当記事ではあまり書かなかったのですが、本書はお金に関する話も多かったです。人生100年時代では、より長期に渡って、自分で自分の資金を管理しないといけないことになるので、金融リテラシーの重要性が増していくでしょう。私は苦手分野なのですが、本書を読んで勉強しないといけないなぁと思いました。

長くなりましたが、本書を読んで、今の自分に足りないものも見えてきたし、予測されている変化の方向性も自分としてはわくわくするものだったので、とても有意義でした。

なんとなく未来に対して不安のある方、人生設計をちゃんと考えたいなと思っている方におすすめの一冊です。そろそろ年末なので、来年からの過ごし方を決める前にぜひ一読を!

 
リンダ・グラットンさんの他の著書はこちら。

 

<今回の内容と近いテーマの記事>

これからの時代の結婚のバイブル:2人が「最高のチーム」になる― ワーキングカップルの人生戦略

「夫婦格差社会」ー データから見る二極化する日本の夫婦像

サンフランシスコ・シリコンバレーで感じた「未来」【講演スライド】

所得のフラット化 〜世界の変化をビジュアルで見る〜

あなたはどのタイプ?7つのタイプと日本人の価値観の変化

 
 




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About The Author

佐藤 茜

サンフランシスコのbtrax社のマーケティング部門でのインターンを終え、2013年1月に日本に帰国。現在は都内でマーケティング・コミュニケーション担当として勤務。 より詳しいプロフィールはこちらから↓

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