社会

「先入観をくつがえそう」ハンス・ロスリング教授が示す、データによる新しい世界の見方

先週、東大で行われた統計学者のハンス・ロスリング教授の公開講義「先入観をくつがえそう」に参加してきました。

Googleが投資し、ビル・ゲイツにグローバルヘルスへのコミットを決心させた
ハンス・ロスリング教授による生講義 「先入観をくつがえそう」
http://www.leadership.m.u-tokyo.ac.jp/event/past/hans_rosling/

ハンス・ロスリング教授については、再生回数が600万回以上のTEDトークが有名ですね。以前にも当ブログでご紹介しました。

あわせて読みたい
所得のフラット化 〜世界の変化をビジュアルで見る〜ここ数年、日本はもちろんのこと、先進国での賃金低下や、中流から下流へのシフトなどの問題をよく耳にします。この記事は、ハンス・ロスリング教授が示した世界の「所得のフラット化」について紹介しています。...
統計データを分かりやすくビジュアル化するとともに、情熱的にその面白さを語るあのハンス・ロスリング教授の授業が生で見られて嬉しかったです。後ほど動画が公開されるようですので、今回は冒頭で紹介されていた3つのクイズをご紹介したいと思います。

動画が公開されていました。
ハンス・ロスリング教授講演会「先入観をくつがえそう」(日本語字幕)
http://todai.tv/contents-list/2013FY/global-leader/sub-jp

1. 世界のどれだけの大人が読み書きできますか?

世界の識字率。日本はほぼ100%だと思いますが、世界ってどうなんでしょうか。私は60%くらいかな?って思いました。
右側の青い四角は教授の出身地SWE(スウェーデン)と、USA(アメリカ)でのアンケート結果。やはり60%くらいが一番多いですね。

答えは…80%!意外と識字率って高いんですね。ユネスコのサイトで見たら、約84%とのこと。

ADULT AND YOUTH LITERACY
http://www.uis.unesco.org/literacy/Documents/fs26-2013-literacy-en.pdf

2. 世界のどれだけの1歳児がはしかのワクチンを受けていますか?

はしかは命に関わることもある感染症。日本だと子供の時にワクチンを受ける人が多いですよね。世界ではどのくらいなんでしょうか。

これも80%という結果でした。想像していたよりもかなり多かったです。世界の健康状況はどんどん改善しているんですね。

3. 極度の貧困に苦しむ世界人口の割合は、この20年間でどのように変化しましたか?

「極度の貧困」とは、一日に$1.25で暮らす人の事を言うそうです。これが過去20年間でどう変わったか、という質問。世界中、景気の悪いニュースが多いですが、途上国では様々な支援活動がされていますよね。この20年で「極度の貧困」は改善しているんでしょうか。

答えは…半分!大幅に改善されています。1980年に20億人だったのが、10億人になったそうです。

近年、中国で極度の貧困から脱却する人が多いので、このような結果になったようです。日本で100年前に起こったことが、いま中国で起こっているということでした。

以前このブログで紹介した ハンス・ロスリング教授のプレゼン からも、世界中の人たちが、住んでいる国に関係なく、同じような生活が送れるようになってきていることが見て取れます。私たちが先進国に生まれたという既得権を保持できるのもそう長くはなさそう、とこのブログで書きましたが、「途上国を支援しなくちゃ」と思っていたら、いつの間にか自分たちの身近にいる日本人の方が貧しかった、という事態も起こるかもしれません。

世界の1日あたりの収入分布。1970年、住んでいる国によって二極化していたのが…

2015年の予測。様々な国の人が、真ん中に集まっています。

 

以下は、ハンス・ロスリング教授が今回のプレゼンの表紙に使っていた画像です。世界は、西側諸国の先進国と、新興国、その他という風に分かれていましたが、それが今は真ん中の画像のような高所得層、中間層、低所得層、というような分類になりました。そして今後は右の図ような、より複雑な構造へと変化していくのでしょうね。

これまでは住んでいる国によって分類されていた人々が、これからはそれに加えて所得、文化、言語、性別、年齢など、様々な要素が複雑に絡み合って、いくつかのクラスタを形成していくようになるのかなと思います。

世界の見方がアップデートされるハンス・ロスリング教授のプレゼン、これからも注目していきたいです。

ハンス・ロスリング教授のサイト
http://www.gapminder.org/

 

2014年11月9日追記

この記事、ハンス・ロスリング教授ご本人にツイートしていただけました(感激!)。

 

今回の内容と近いテーマの記事

あわせて読みたい
ファクトフルネス
未来を考えるために、世界の見方をアップデートしよう。子育て世代必読の「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」 「あなたは世界のことを知らなさすぎる」と言われたら、ほとんどの方は驚くのではないでしょうか。「細かな数値は覚えていなくても、学校で...
あわせて読みたい
所得のフラット化 〜世界の変化をビジュアルで見る〜ここ数年、日本はもちろんのこと、先進国での賃金低下や、中流から下流へのシフトなどの問題をよく耳にします。この記事は、ハンス・ロスリング教授が示した世界の「所得のフラット化」について紹介しています。...
あわせて読みたい
地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」がおもしろい内閣官房まち・ひと・しごと創生本部から地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」の発表がありました。各地域の人口の変化や人の流れ、企業活動のデータを図やグラフで分かりやすく表示してくれるこのサイトの使用例を紹介したいと思います。...
あわせて読みたい
トライセクター・リーダー(Tri-sector Leader)とは?企業、行政、非営利組織の垣根を超えて活躍する人材トライセクター・リーダー(Tri-sector Leader)とは、民間・公共・社会の3つの垣根を超えて活躍する人材を言うそうです。必ずしもこの3つに所属している(していた)必要はなく、2つ、または1つのセクターに身をおきながら、他のセクターに属する人と協同してセクター横断的な課題に取り組む人もトライセクター・リーダー...
あわせて読みたい
人生100年時代の生き方と働き方。ライフシフト〜100年時代の人生戦略(書評)読んだ後、これから自分がどう生きていけばいいかの道筋がよりクリアになり、未来により希望が持てるような、そんな気分になる本でした。本書は基本的に、人生100年時代を迎えるにあたってのポジティブな側面に光を当てていますが、もちろん課題についても言及しています。...
あわせて読みたい
映画「Most Likely To Succeed」ーこれからの世界で生き抜く子どもを育てる新しい学校教育とは?「Most Likely To Succeed」は、「人工知能 (AI) やロボットが生活に浸透していく21世紀の子ども達にとって必要な教育とはどのようなものか?」というテーマが設定されたドキュメンタリー映画です。...
ABOUT ME
佐藤 茜
2歳児の子育てをしながら編集・マーケティングまわりで活動中。NPO法人ETIC.が運営するDRIVEメディアの編集長。 大学卒業後、人材系ベンチャーで新規事業立ち上げやマーケティングを担当。ニューヨーク留学、東北復興支援NPO、サンフランシスコのクリエイティブ・エージェンシーでのインターン、衆議院議員の広報担当秘書等を経験。 より詳しいプロフィールはこちらから↓
関連記事