政治/行政

「弱者に希望を」ーサンフランシスコの英雄、ハーヴェイ・ミルクが起こした革命

アメリカで初めてゲイであることを明らかにして当選した政治家 ハーヴェイ・ミルク

 
サンフランシスコには、ゲイコミュニティとして有名なカストロという地区があります。私が住んでいた場所から近かったので、2回ほど足を運びました。
 
このカストロでヒーローとして尊敬されているのが故ハーヴェイ・ミルク。サンフランシスコの市会議員で、アメリカで初めてゲイであることを明らかにして当選した政治家でした。

ニューヨークからサンフランシスコへ移り住みカストロでカメラ店を開き、その後市議会に立候補。2度の落選を経て、1977年に3度目の選挙で当選し市会議員になります。市の同性愛者権利法案を後援したりして活躍しますが、議員に就任して1年も経たない内に暗殺されてしまいます。
 
こういった経緯から、ハーヴェイ・ミルクはゲイの権利運動の殉教者と見なされているそうで、今でもLGBTを含む多くのアメリカ人から尊敬されています。1999年には「タイム誌が選ぶ20世紀の英雄・象徴的人物100人」に選出され、2009年にはオバマ大統領によって大統領自由勲章を授与されました。

また、最近オランダのゲイ・カルチャー誌「mate.」の世界を変えた500人のパワー・ゲイで第6位に選ばれていました。
 

彼を記念してカストロ通りの入口に「ハーヴェイ・ミルク・プラザ」というメモリアルサイトが作られています。



 
一緒にカストロ通りに行った友人と、ハーヴェイ・ミルクの生涯を描いた伝記映画「MILK」をDVDで見たんですがこれがすごくよかったです。ミルクが生きていた当時、1970年代頃のゲイやレズビアンの人たちに対する世間の風当たりの強さは今以上だったことが映画から伝わってきます。その状況を変えようと奮闘するミルクと、協力する周りの仲間たち、そして少しずつ社会が変わっていく様子、しかし志半ばで暗殺されてしまうミルク…。

困難な状況でも、自分の信念にしたがって行動し、周りを巻き込んで社会を変えていくミルクの生涯はLGBTに関心がなくても、社会に対しての問題意識があり何かしたいと思っている方の心に響くものがあるはずです。
 
映画の予告編はこちら。2008年に上映されたそうです。 アカデミー賞2部門受賞、8部門ノミネート。

 
映画でも出てくるハーヴェイ・ミルクの最後のスピーチはこちら。


こちらのサイトに日本語訳がありました。
ハーヴェイ・ミルク最後のスピーチ「希望がなければ」

希望がなければ…同性愛者だけでなく、黒人やアジア人や障害者や老人や、マイノリティーの私たちすべてが、希望がなければ諦めるしかない。希望だけでは生きて行けないことはわかっているが、希望がなければ生きていることの価値がないんだ。君、君、君たちみんな、彼らに希望を与えなければ!
Without hope, not only gays, but those who are blacks, the Asians, the disabled, the seniors, the us’s: without hope the us’s give up. I know that you can’t live on hope alone, but without it, life is not worth living. And you, and you, and you, and you have got to give them hope.

 
 
そういえば、去年の11月の大統領選後、当選したオバマのスピーチで似たようなフレーズが出てきました。

黒人でも白人でもヒスパニックでもアジア人でもネイティブ・アメリカンでも、若くても年をとっていても、豊かでも貧しくても、障害があってもなくても、ゲイでもストレートでも関係ない。もしあなたに挑戦する気があるなら、ここアメリカで夢を叶えることができる
It doesn’t matter whether you’re black or white or Hispanic or Asian or Native American or young or old or rich or poor, abled, disabled, gay or straight. You can make it here in America if you’re willing to try.


 
ここを翻訳してツイートしたらたくさんRTされました。

 

オバマのスピーチの全文翻訳はこちらから読めます。
バラク・オバマ米大統領、再選のスピーチ 全文和訳(gooニュース)

アメリカの大統領として初めて同性婚支持を表明したオバマ大統領。ハーヴェイ・ミルクの考え方からインスパイアされているところがあるかもしれないですね。

 
カストロ地区に象徴される「多様性を認めよう」というサンフランシスコの空気、好きでした。日本にもゲイやレズビアンの友人・知人がいるのですが、まだなかなかカミングアウトをするのはたいへんそうです。
 
こちらLGBT支援活動をしている前職の同僚のひろこさんと恋人の小雪さんのサイト。応援してます。
http://www.3couleurs.co.jp/
 

サンフランシスコのCity Hallにあったハーヴェイ・ミルクの胸像。

 

今回の内容と近いテーマの記事

あわせて読みたい
「未来政府」―起業家 兼 カリフォルニア州副知事が目指す新しい民主主義の形(書評)「未来政府」は、ギャビンが自身の政治家としての経験や、1年半かけて全米をまわって起業家、政治家、メディア関係者、研究者などと対話を重ねていく中で考えた未来の政府や民主主義のあり方についてまとめた本です。...
あわせて読みたい
オバマ大統領の選挙戦を追ったドキュメンタリー「バラク・オバマ 大統領への軌跡」オバマの出馬から大統領初当選までを追ったドキュメンタリーを見て感銘を受けたので、簡単に内容を紹介したいと思います。タイトルは「バラク・オバマ 大統領への軌跡」。原題は「By the People: The Election of Barack Obama」です。...
あわせて読みたい
ヒップな生活革命
アメリカで起きている生き方の変革とは?ー「ヒップな生活革命」を読んでアメリカのニューヨークやポートランドを中心に起こっているライフスタイルの変化をリポートした「ヒップな生活革命(佐久間 裕美子・著)」が面白かったです。...
あわせて読みたい
サンフランシスコ・シリコンバレーで感じた「未来」【講演スライド】今回の話は、2025年の社会を予測して書かれた「ワーク・シフト」を軸にまとめました。渡米直前に本書を読んだのですが、滞在中、「いま経験してるこれって、ワークシフトで描かれていた"未来"そのものだ」感じることが多々あったためです。サンフランシスコ近辺は「未来が偏在している場所」なのかもしれません。...
あわせて読みたい
サンフランシスコのサードウェーブコーヒー5選+テック系スタートアップとのつながりサンフランシスコ滞在中、いくつかそのサードウェーブコーヒーに該当すると思われるカフェに行きました。私の舌の能力では、味については「美味しい」以上の事は言えません…なのでお店の雰囲気を中心にご紹介したいと思います。また、これらのカフェは、サンフランシスコのテック系スタートアップといい関係を築いているなと感じました。...
ABOUT ME
佐藤 茜
2歳児の子育てをしながら編集・マーケティングまわりで活動中。NPO法人ETIC.が運営するDRIVEメディアの編集長。 大学卒業後、人材系ベンチャーで新規事業立ち上げやマーケティングを担当。ニューヨーク留学、東北復興支援NPO、サンフランシスコのクリエイティブ・エージェンシーでのインターン、衆議院議員の広報担当秘書等を経験。 より詳しいプロフィールはこちらから↓
関連記事